大腸がんの話 大田病院 消化器内科 山本博

急激に増えつつある大腸がん

図写真 近年、大腸がんの患者数は増加しています。下のグラフからわかるように、大腸がんによる死亡率は年々増えていて、今や胃がんに並ぼうとしています。大腸がんが増加している要因には、脂質の多い欧米型の食生活がその背景にあると言われています。あと、内視鏡の普及によって、がんを見逃すことが少なくなったことも患者数増加の原因の一つでもあります。
 しかし、治療後の「5年生存率」をみると、これも向上しているのがわかります。つまり患者さんの数が増え、死亡者数も増加していますが、反面、その治療法も確実に進歩しています。特に「早期がん」と呼ばれる小さながんは、ほぼ100%直るようになってきました。今回は大腸がんについて理解を深めて頂き、多くの組合員のみなさんに集団検診を受けることをお勧めしたいと思います。

〜大腸癌の症状〜

 大腸がんの代表的な症状は、血便、便通異常(便秘、下痢)、腹痛です。早期がんは2センチ以下の小さながんがほとんどで、症状もないことが多く、肛門出血に気づいて検査するか、定期健診で見つかるケースが増えています。進行大腸がんではがんの部位、大きさにより様々ですが以下のような症状があらわれます。

結腸癌

 盲腸と上行(じょうこう)結腸のがんは、腸の内径が太く便通の異常がおこりにくいこと、この場所の便は液状であること、出血しても排便までに時間がかかるため、発見しにくい傾向があります。発見されるころにはがんが大きくなり、腹部のしこり(腹部腫瘤:ふくぶしゅりゅう)や、出血による貧血がおこり、全身倦怠感が出始めて気づくこともあります。この様な状態の時は、がんで内腔が狭くなっており、腹部膨満感や無理に内容物を出そうとした結果、腹痛などの症状があらわれます。下行(かこう)結腸やS状結腸ではがんにより内腔が狭くなると、便が通過しにくくなり便秘と間歇(かんけつ)的な下痢などの便通異常がみられます。腹痛や腸閉塞(ちょうへいそく)(便とガスがでない)のような症状になることもあります。肛門に近い部位なので血便で発見しやすくなります。

直腸癌

 直腸がんの出血は便に血液が付着して発見されることが多く、比較的鮮血に近い状態です。がんで直腸内が狭くなると、便が細くなったり、排便した後も残便感が残ります。これは便が排泄された後もがんがあるために便意をもよおすのです。

大腸がんを早期に発見するには?まずは便潜血検査を!

 まずは定期的に(毎年)大腸癌検診をすることが大切です。一般的には便潜血法が行われています。
 平成10年度の全国集計によると、便潜血チェック陽性で、検査をした人のうち、30人に1人の割合で大腸がんが見つかっています。
図 痔があるから便潜血が陽性になることがあります。しかし、痔だと思っていたら、実は直腸がんだったということがよくあります。潜血反応で陽性が出たら必ず精密検査を受けましょう。
 腹痛、便秘、便秘と下痢を繰り返す、便が細くなるという症状がある方は、便潜血チェックの結果にかかわらず精密検査をすることをおすすめします。
 また、ご両親・ご兄弟で大腸ガンになった方が見える場合は、普通の人よりも大腸ガンになりやすいため、念のため、精密検査を受けておくと安心です。

精密検査は大腸内視鏡が基本

 精密検査の基本は大腸内視鏡です。これは、腸を洗う薬を前日あるいは直前に飲んで、腸をきれいにし た後、肛門から内視鏡を入れて、大腸の中を見る検査です。内視鏡では驚くほど腸の中がよく見えます ので、小さな病変もよく見つかります。内視鏡は、おなかの手術をしていて腸に癒着がある人、腸が非 常に長い人には負担がかかることがありますが、内視鏡も細くてやわらかくなり技術も進歩しています ので以前より苦痛が少なく受けることができます。
 内視鏡がどうしても奥まで入りにくい人には注腸検査といってバリウムを肛門から入れて大腸を撮影 する検査もやっています。

大腸がんの早期発見を草の根の健康作り運動で

 建設職人で構成されている東京土建一般労働組合は、一万人大腸がん検診運動を提起して、大腸がんの発見が遅れて手遅れになる組合員をなくす運動をはじめています。医療生協では便潜血の自己測定を班 会で行う運動も行われています。地域・職域で自らの健康と家族の生活を守る運動として、便潜血の集団検診をおおいに取り組んでいきたいものです

コラム1
ポリープとがん

 ポリープは、粘膜にできる「イボ」のことです。ポリープは一般には良性のもののことをさします が。がんになる可能性もまったく否定はできません。胃のポリープはほとんどが良性で、がんになる可能性は低く、大腸のポリープは、大きくなるとがんになる可能性のある、腺腫(せんしゅ)というポリープが多いのが特徴です。ある程度大きくなると、がんになる可能性が高くなるので、最近は予防的にとることもあります。(Y)


コラム2
大腸内視鏡検査はお尻丸出しでやるの?

 病院とはいえ人前でお尻を出すことは、誰でも恥ずかしいものです。ですから、検査する側もその点には十分な配慮を払っていて、検査着には工夫がこらしてあります。
写真 内視鏡検査を受けるにあたって、あらかじめ特別なトランクス型のパンツ(写真)に履き替えてもらいます。このパンツには、ちょうど肛門の部分に縦の切り込みが入っています。そこを通して内視鏡を入れるようになっているため、お尻を出すことなく検査が受けられ、女性の方でも恥ずかしい思いをすることはありません。また、大腸内視鏡検査は、ドアやカーテン等で仕切られた検査室で行われるため、他の患者さんに見られる心配もありません(Y)。

 

 

>>刊行物目次に戻る





ホームご案内すずらん集いの場グループホームゆたか調剤薬局お知らせ │ 刊行物 │ リンクご入会お問い合せ

Copyright (c) 2001 Jonanhoken., All rights reserved.