早めに始めたい花粉症対策


ゆたか病院院長 権守光夫

 節分の日のテレビで関東地方の今年のスギ花粉症は2月10日頃に始まり、花粉の飛散量は「やや多い」と予報されました。また「花粉情報協会」の予測でも東京都心での今年の花粉飛散量は4500個/cm2/季節と予想され平均(1800個位)の倍以上といわれています。 2000年の耳鼻科学会の全国調査では、スギ花粉症の有病率は16.2%(6人に1人)であり、東京都民は20.4%と多くまた、年代別では30・40代にピークがあります。スギは昭和50年代に大量に植林され現在450万haに達しますが花粉をつける年代になったこと、その小さい30〜40ミクロンの花粉が排気ガス中の窒素酸化化合物結合して鼻の粘膜や眼の結膜に作用して症状をおこします。

花粉症がおこるしくみ

花粉が初めて鼻の粘膜に入ると本来自分の体にはない異物だと認識して、花粉に対する「抗体」という一種のタンパク質を作ります。そして次に花粉が鼻の粘膜に接した時に粘膜の表層にある「肥満細胞」の表面の「抗体」と結合すると肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエン(LTS)といった化学伝達物質が放出されます。(図1)ヒスタミンはすぐに知覚神経を刺激してくしゃみが発作的反復的に出ますし一方鼻の分泌腺に作用する副交感神経を刺激して水様性鼻汁が出てきます。また主にLTSは鼻の血管に作用してうっ血・浮腫をきたして鼻閉(はなづまり)をおこします。これらの反応は花粉がついて数分のうちにおこる即時相反応といわれます。

 一方、様々な物質により白血球(好酸球が中心)が鼻の粘膜に集まり炎症性に粘膜が腫れることからも鼻閉がおこりますが、この反応は花粉がついてから6〜10時間後に見られることから遅発相反応といわれます。

 これら二つの反応を花粉が繰り返しおこすと鼻の粘膜も慢性的に肥厚して鼻閉が長引いたり、温度変化などの花粉以外の刺激でもくしゃみがおこりやすくなります。

 眼の症状は痒みが最も多く、ごろごろするといった異物感や眼脂もおこりえます。涙の中の肥満細胞に花粉が作用すると、肥満細胞からヒスタミンが遊離されそれが眼の知覚神経である三叉神経を刺激して痒みをおこします。またスギ花粉症の人の65%はヒノキ花粉症でもあります。スギとヒノキは花粉の飛散時期が一ヶ月ずれておりスギは3月上旬、ヒノキは4月上旬(桜の開花期)にピークがあることから、両方の花粉症のある人は図2のように2月中旬〜5月上旬まで3ヶ月近く花粉症に悩まされることになります。予防は2002年版「鼻アレルギー診療ガイドライン」に載っている表を見てください。

治療の方法

治療は、薬物療法が中心です。前述したように鼻も眼もヒスタミンが症状をおこすことから抗ヒスタミン薬が基本になります。当院の薬ですとアレジオン、エバステル、ザジデン、アゼプチンなどですが、花粉飛散開始前から治療できる人には抗ヒスタミン作用のない化学伝達物質遊離抑制薬(インタール、リザベンなど)を2週間ほど前から内服することも有効です。大量飛散日などそれらの薬で抑えきれない時には症状に応じて点鼻薬や点眼薬を使います。また鼻閉の強い人にはLTS拮抗薬(シングレア)が有効です。憂鬱な季節をなるべく快適に過ごしたいものです。


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